【外国人教育担当必読】外国人社員へのOJTで注意すべきこと
日本国内の多くの企業は外国人採用の一つの指標として、「日本語能力試験(JLPT)」合格を採用基準としています。
外国人労働者が企業にとって貴重な存在になりつつある中、課題となっているのが外国人採用後のOJTです。実際の業務では、日本語能力試験の高スコアを持っているだけでは日本人社員と同じようには仕事ができないと感じる場面も多くあるからです。
ですから今回は、外国人労働者がスムーズにビジネスシーンに対応できるようにするためのOJTについて見ていきましょう。
【必要なのは日本語能力だけじゃない!?】外国人へのOJTの心構え
日本人であれ外国人であれ、採用後は研修などを通して社員を教育しなければなりません。しかしながら、日本語能力があれば問題ないと思っていませんか?当然、外国人は別の文化で生まれ育っているので、日本人に対する教育と同じ方法ではあまり上手くいかないことが多いです。ですから、日本語能力向上と合わせて、異文化間のギャップを埋めていく必要があります。
①具体的かつシンプルな指示
やらなければならない事とやってはいけない事は、とくに分かりやすく教える必要があります。そのために必要なのは理解しやすい日本語を用いた、具体的かつシンプルな指示です。
「なるべく早くやってください」
「明日の朝10時までに終わらせてください」
例えば、「なるべく早くやってください」という指示は、外国人にとっては具体的ではなく理解しにくい指示となります。「明日の朝10時までに終わらせてください」という指示の方が明確で、やるべき事がはっきりするので、外国人採用後に社員を教育する場合にはこうした指示をするように心がけましょう。
②手厚いフォロー
さらにミスをしっかりフォローしてあげる事も重要です。研修中の外国人労働者であれば、ミスをするのは無理もない事です。ミスの原因を説明し、どうすれば同じミスを繰り返さずに済むのかを丁寧に教えれば徐々に生来の能力を発揮していくでしょう。もちろん外国人労働者の離職を防ぐうえでも重要なポイントです。
「またミスしたんですね。ミスが続いているので、次から気を付けてください。」
「今回は作業の順番が違っていてミスに繋がってしまったようです。今回のミスをメモしておきましょう。何かわからないことがあれば何度でも確認してくださいね。」
【腰を据えてゆっくりと!】外国人へのOJTで注意すべきこと
外国人採用後の教育で注意すべきことを3つ紹介します。
①日本人に教えるよりも外国人に教える方が1.5倍ほどの時間がかかる
日本語による教育や指示をよく理解できないという外国人は少なくありません。一概には言えませんが、日本人社員に教える1.5倍ほどの時間がかかると考えておいた方がいいでしょう。
日本語のマニュアルも外国人の教育の障がいとなります。日本語のマニュアルには非常に細かな指示まで載せられているので便利ですが、外国人にとってはすべてを読むだけでも一苦労です。すべてを理解した上で業務にあたるのはかなり難しいでしょう。
【今すぐ実践!】外国人のための業務マニュアルの工夫
そのため、上記のような工夫が非常に有効です。少しの工夫で外国人が早く仕事を覚えやすくなり、失敗も少なくなります。
②定期的な個人面談を行いケアをする必要がある
一定期間の研修ですべてを終わりにするのではなく、定期的な個人面談を行う事も必要です。外国人は転職に対してそれほど抵抗がないため、長く会社で働いてもらうために個人の希望を定期的に確認すると良いでしょう。
現在の仕事量やキャリアパス、職場環境、今後取得したい資格、改善を希望する点などをヒアリングすると、より一層能力を発揮できる環境を整えてあげられるかもしれません。厚生労働省から出されている下記資料も参考にしてみてください。
厚生労働省「高度外国人材にとって魅力ある就労環境を整備するために雇用管理改善役立つ好事例集」
➂多様性を受け入れる
外国人を雇用した企業が抱えている別の課題があります。それが「生活習慣や文化の違い」です。
例えば、時間にルーズ、会社の備品を持ち帰る、残業をしないなど日本人とは考え方が大きく異なる点が少なくありません。そのため外国人労働者の出身地の文化や背景を知る時間を設ける必要があります。その国の政治的背景や歴史、文化を深く知ると、どのように教育すれば良いのか、なぜそうした行動を取るのかが分かるようになるでしょう。下記記事では、生活習慣や文化の違いから職場で起こりやすいトラブルについてまとめています。
【外国人労働者雇用】問題事例3選と回避方法
外国人労働者を雇用する上で知っておきたいよくある職場内トラブル事例3選と解決方法をご紹介します。
日本とは異なるの異文化(働き方)の例
例えば、ヨーロッパ諸国では残業を規制する法律が制定されているため、残業をしない事にしている労働者が少なくありません。こうした点を覚えておけば残業をしてもらうためにはしっかりと日本のルールを説明する必要がある事を理解できます。
さらに東南アジアや南アメリカでは、「任された仕事が上手くいかなくても仕方ない」という考え方があります。これも一つの文化です。その国の背景を理解しつつ、少しでも仕事が捗るように努力してもらうよう根気強く教えていく必要があります。下記では、日本特有のビジネスマナーを紹介しています。
外国人社員に教える日本のビジネスマナー3つの基本
ビジネスマナーを教えずにいると、思わぬところで失敗をしてしまうことがあります。ビジネスマナーの違いで失敗してしまうと、外国人社員自身も自信を失ってしまいますし、会社の業績にも影響を及ぼしかねません。
互いに歩み寄ってより良い職場環境へ
また、外国人労働者としても、自国の文化を理解しようとしてくれていると感じられれば、より一層仕事に情熱を傾けようと思うはずです。企業の中には外国人労働者の文化を知るための時間を特別に設けているところもあります。相互理解が外国人教育には何よりも重要なのです。
外国人採用企業のOJT担当・現場責任者向け
外国(主にアジア圏)と日本の社会や文化の違いを理解することを通して、外国人と働く際に起こるさまざまなトラブルの対処法を身につけることができます。
外国人に教えるべき日本語以外のこと
外国人労働者の現場で必要な教育のために利用できる一つの方法が外国人実務能力研修です。外国人実務能力研修では、外国人労働者が母国との違いを話し合ったり、さまざまなビジネスシーンで役立つ話し方、行動の仕方などを教えたりしています。
自社だけでは日本の文化や働き方、ビジネスマナーのすべてを教えることができないと感じている方はご相談ください。
入社試験や昇進試験に活用も!
日本の文化や商習慣を理解していただくことを目的としており、習熟度に応じて階級が分けられているので、どの程度のビジネス能力を有しているか判別が可能です。
外国人へのOJT大きな利益を得ましょう
外国人労働者は、粘り強くしっかりと教育すれば十分な能力を発揮してくれます。企業を悩ませている人材不足を解消するだけでなく、より大きな利益を企業にもたらす可能性さえあるでしょう。
外国人を雇用して海外進出の足掛かりにすることができるかもしれませんし、日本人社員の刺激になる可能性もあります。会社全体に活気が生まれて、職場環境の改善も見込めるでしょう。
こうした良い連鎖反応を引き起こすためにも、日本語能力だけでなく現場での役立つ実務能力を意識して教育を進めていく事が重要なのです。
この記事を書いた人
日本ビジネス能力認定協会理事 佐々木敦也
アメリカ駐在を経て、1991年にソフトウェア会社を設立。代表取締役として会社を経営する傍ら、外国籍社員の採用・育成を行う中での経験を教材にまとめ、2015年に日本ビジネス能力認定協会を設立した。
著書:『外国人実務能力検定公式テキスト』